MX100インタービュー

Vol.9 野口幸三 (ギターテクニシャン/ギター修理・製作)
楽器店に勤務しつつ自身でもギター修理工房Regal Placeを主宰、2足の草鞋で活動する野口幸三さんはまた、有名国内アーティストのギターのメンテナンス&調整を担当する、日本では希有な“ギターテクニシャン”でもある。自宅内にある工房で作業する際には集中するために常に音楽を流しているという野口さんが、やっと巡り会った満足できるオーディオシステムがMX100だという。
自分の耳を鍛えるための“音探し”がしやすい自分の耳を鍛えるための“音探し”がしやすい
 そもそも、“ギターテクニシャン”自体、初めて耳にするという方が多いのではないだろうか。それまで楽器店に勤めながら独学でギターのリペアを勉強した野口さんも、アメリカに渡り「Performance Guitar」で修行した際に“ギターテクニシャン”という仕事と出会った。
「“ギターテクニシャン”は、アーティストの楽器に関して、メンテナンスから修理からすべて責任を持つというもので、アメリカではメジャーですが、日本ではほとんど知られていません。レコーディング前とか、ライブの際に現場に行き、アーティストさんの意見を聞いてギターを調整して弾きやすくしたり、好みの方向に音作りをするということが多いですね。ネックの調整をして指板を磨いて、フレットを磨いて、弦を交換して、バランスを見て。音作りは、コンデンサーや、ハンダの混ぜ具合など細かな部分で行ないます」
 壊れた(または調子の悪くなった)ギターを元の状態に戻すのがリペアマンなら、より積極的に、アーティストの感性に合わせてギターのセッティングや音作りをし、アーティストのプレイを陰から支えるのがギターテクニシャンである。
 その作業について細かな説明を受けたのだが、とにかく数字に表れないような微妙なものばかり。つまり、指先の感覚、目で見た感覚、とりわけ耳で細かな音を聴き分けることが重要になってくる。
「確かに、僕の仕事は耳が勝負ですから、常に自分の耳を鍛えておこうと思っています。音楽を楽しんでいても、半分トレーニングのような感じで、“音を探す”ということをしています。ディスクに入っている細かい音まで全部拾いたいと思っていていますから、聴くときには音量をできるだけ下げて、出てくる音に集中しています。音量を上げると、どうしても耳が全部を拾わなくなってしまいますからね。
 ところが、オーディオシステムのパフォーマンスが低いと、音量を下げると音楽のおいしいところがなくなってしまい、音を探せなくなってしまうので困っていたのです。その点、MX100は、音量を下げても、帯域の上から下まできちんと出してくれるので音が探しやすいんですよ。それから音に奥行き感があるので、どの楽器がどこにあるかわかりやすいですね。たまにはガーンと音量を上げて思い切り聴きたいときもありますが、音量を上げても立体感が崩れないのが嬉しいですね」
3D的な立体感があって、丸い感じに音が広がってくれる
3D的な立体感があって、丸い感じに音が広がってくれる  “立体感”にこだわるところが、楽器に携わり、生の音楽を間近で感じることの多い人ならではの感覚ではないだろうか。
「最近、よくアコースティックギター・デュオの山弦を聴いているので、MX100でも最初に鳴らしてみたのですが、音の奥行きをものすごく表現してくれることが衝撃的でした。今まで使っていたオーディオシステムでは左右に広がるだけでしたが、MX100で聴くと3D的な立体感があって、それも四角ではなく、丸い感じに音が広がってくれるんです」
 この「丸い感じ」というのは、つまり楽器という一点から音が出て、それが空間に広がっていくという、現実の音の伝わり方と同じなのだ。そこが野口さんの耳を捉えたのだろう。
 さらにMX100のサウンドは、「全体としてクリアな音が印象的で、しかも小型なのにロー(低音)もしっかり出ていて、『今の技術ってすごいんだな』と思いました」と、最初から好印象だったと言う。
 そこで野口さんはMX100を工房に導入し、これで仕事中はずっと音楽を流しているという。作業をしながら、どの程度音楽に耳を傾けているのだろうか。
「僕の場合、作業に集中しているということは、感覚全てが集中しているということなので、いわゆる『ながら聴き』にはならないんです。つまり仕事中はずっと音楽にも集中しているということなので、そこで鳴っている音は良い音でないと困るんです。自分の仕事に対するモチベーションとかリズムは、音楽によって作られているところがありますので。
 大型のスピーカーで鳴らしていたこともあったのですが、スペース的にちょっと……だったので。移動もできないですしね。MX100を導入してからはそういう不満が一気に解消して、仕事がよりスムーズに進むようになった気がします(笑)。MX100は現在、2つの作業机の間が定位置で、しっかりした音なので正面でなく斜め横から音が出ていても違和感はありませんが、必要に応じて正面に移動するようにしています。それだけでなく、リビングにも持って行きますし、家中どこにいるときでもMX100で音楽を聴いていますよ」
 野口さんの音楽生活は、仕事もプライベートも、常にMX100とともにあるようだ。
野口幸三(のぐち・こうぞう)
野口幸三(のぐち・こうぞう)
1990年、楽器店に入社、数年後より独学でリペアを学び始める。2001年、アメリカ・ロサンジェルスのカスタムギターショップ、Performance Guitarにギター製作(Varita Guitar)とリペア修行のため渡米。2004年、Regal Place設立。2007年、ギター用ハンドメイドケーブル開発、販売開始。タハラ楽器Regal Placeの2足の草鞋で修理、販売、ギター製作、ギターテクニシャンを行なう。